歯科衛生士が辞めたい、転職したいと考える理由の1つに「院内の衛生管理が不十分、ずさん過ぎる」というのもあります。たとえば治療に使ったハンドピースやタービンを洗浄・滅菌せず使いまわしたり、1日中同じグローブを着用していたり、床に落としてしまった器具や補綴物をそのまま使っていたり…。
あまりにずさんな衛生管理に、不安や嫌悪感を覚える歯科衛生士も少なくありません。とくに専門学校で衛生管理の重要性について教えられてきた新卒歯科衛生士や、適切な衛生管理が行われていたクリニックから転職してきた歯科衛生士の場合、そのギャップはあまりにも受け入れがたいものです。
しかし、こういったずさんな衛生管理が行われているクリニックは「少しでもコストを削りたい」「患者が多すぎて洗浄・滅菌に手が回らないが、患者数は減らしたくない」など院長の方針に原因があるケースが多く、改善を申し出てもなかなか受け入れてもらえないこともあります。
厚生労働省研究班が平成24年度に行った「歯科医療機関における効果的な院内感染対策の促進に関する研究」によると、ハンドピースを必ず交換しているというクリニックは30%強しかなく、ときどき交換していると答えたクリニックが20%弱、感染症患者のときだけ交換していると答えたクリニックが30%強、交換していないというクリニックも20%弱ありました。
ただ平成27年度に行われた調査によると、衛生管理の実施状況は改善傾向にあるようです。
院内感染防止対策の推進を図るため、平成30年度の診療報酬改定で歯科初診料・歯科再診料の見直しが行われ、院内感染防止対策を行っているクリニックの初診料・再診料の引き上げが実施されました。初診料・再診料の見直しは年々行われており、令和4年度には初診料264点・再診料56点(施設基準に満たない場合は初診料240点・再診料44点)まで引き上げられています。また、昨今は新型コロナウイルス感染症の影響もあり、クリニックの衛生管理に対する意識は高まっていることが予想できます。
とはいえ、正しい衛生管理が継続的に行われているかどうかは実際のところ分かりません。また、以前は適切な衛生管理が行われていなかったクリニックの場合、今は衛生管理が徹底されていたとしても、新型コロナウイルス感染症が収束し始めたときに元の体制に戻ってしまう可能性もあります。
院内感染対策・衛生管理は、患者さんの安全はもちろん、医師・スタッフ自身の感染を防ぐためにも重要なものです。正しい対策・管理が行われていない常に感染の危険は付きまといます。「このクリニックはおかしい」と違和感や嫌悪感を抱えたまま働き続けるのはおすすめできません。
院長に相談して環境が改善されれば良いのですが、相談しても受け入れてもらえなかったり、「自腹でグローブを買って交換して」と言われたりするケースも多いようです。
当メディアの取材に協力いただいた山口県山陽小野田市にある「公園通り歯科」では、患者さんはもちろんスタッフの安心・安全も重視し、徹底した衛生管理が行われています。
個室の診療室には口腔外バキュームを完備しているほか、ユニット内の水と手洗いは中性電解除菌水(高濃度次亜塩素酸水)を採用。診察中の飛沫感染防止に努めています。また、危険な器具は手洗いせずミーレ:ジェットウォッシャーを使って自動洗浄。同時に細菌・ウイルスの不活性化まで行えます。
そのほか各種衛生・滅菌機器も揃えており、感染症対策と同時に作業の効率化・スタッフの負担軽減も叶えています。
山陽小野田市にある公園通り歯科は、「人」を財産と考えるクリニックです。
この考えは患者様のみならずスタッフに対しても同様で、財産たるスタッフのために重視しているのが「教育」と「働きやすさ」。
教育環境としては、知識・経験が0であっても、スキルアップしやすいように、アプリや動画にくわえ、テキストによるマニュアルや経験豊富なインストラクターによる研修制度などを提供。
また、働きやすさについては、月5時間程度の残業や有給消化率100%といった取り組みに力を入れています。
分業体制によって、ひとりひとりが専門性の高い知識や技術を身に着けて「主役」として輝きつつ、しっかりと休みも取りながら、やりがいも実感できる場所、それが「公園通り歯科」です。